リチャード・ファインマンとビル・ゲイツ
(Introduction)
斬新なアイディア,刺激的な意見,想像力あふれる洞察,未知の領域と神秘の世界への讃歌.これらを今からお見せします.
このシリーズの最初は,伝説の物理学者リチャード・ファインマンとマイクロソフトのビル・ゲイツとの想像上の対話です.
ゲイツの質問に対してファインマンが答えることの多くは,何年もの間に講義や書籍,友人との会話で彼が実際に口にした内容です.
ゲイツの質問を作成するにあたって,基本的には彼の講演,New York Timesのコラム,そして彼の本:『ビル・ゲイツ未来を語る*1』と『思考スピードの経営*2』をもとにしました.
ファインマンのファンでなければこんなことをやろうとは思わなかったでしょうし,物理学を専攻していたことも一助となりました.(バングラデシュにあるダッカ大学物理学科の学部生だったときに,私は『ファインマン物理学*3』にはじめて出会いました.私はどうしてもファインマンに手紙を書きたくなって,初学者からプロまで,世界中の物理学徒にとって彼の存在がどれだけ刺激になっているかということを伝えました.思いがけないことに,ファインマンは返事を書いてくれました.「私のシリーズがそれほどよい影響を与えていると聞いてうれしい」と.しかし私が一番よく覚えているのは,その手紙から伝わってきた寛大な心です.私は手紙で,発展途上国に優れた物理学者がいないことを嘆いたのですが,ファインマンはそれに反対して,「アブダス・サラム*4という最近では最も優秀な理論物理学者がいるではないですか.彼と話すたびに,私は何か新しいことを学んだものですよ」と答えたのです)
注記:ファインマンはタンヌ・トゥーバ*5への旅行に興味津々で,子供のようにはしゃいで楽しみにしていましたが,残念ながらその旅行が実現することはありませんでした.彼の精神に敬意を払って,友人であるラルフ・レイトンが1988年の7月にトゥーバを旅しました.レイトンはそのときの話を,愉快なエピソードとともに彼の本:『ファインマンさん最後の冒険*6』に収めています.